FSS登録の書類一覧には、投資助言会社、サービス提供会社、GPの資産運用ライセンスの証明という項目があります。ところが日本では、金融商品取引業の登録ではなく届出によって業務を行っている運用会社が少なくありません。ここでは、ライセンス証書という形の書面が手元にない場合に、何を出してどう説明するのかを整理します。
ライセンス証明の欄に何を書くのか
26項目のチェックリストのうち、グループ7が資産運用ライセンスの証明です。対象は投資助言会社、サービス提供会社、GPの3者で、各社が監督を受けている根拠を示すことが目的の項目です。
したがって、この項目が求めているのは「ライセンス証書という紙」ではなく、その当事者がどの制度の下で、どの当局に対して、どういう立場で業務を行っているのかの説明です。証書が発行される法域であれば証書の写しが最も分かりやすい疎明資料になるというだけで、証書がなければ登録できないという建て付けではありません。
問題は、証書がないという事実を書類上どう表現するかです。空欄にしたり「該当なし」とだけ書いたりすると、担当官は何が起きているのか分からないまま照会を出すことになります。
適格機関投資家等特例業務 韓国での扱いはどうなるのか
日本の適格機関投資家等特例業務は、財務局への届出によって業務を行う制度です。関東財務局をはじめとする財務局が届出の受理先になります。金融商品取引業者としての登録証が交付される形ではないため、韓国側に出せる「ライセンス証書」は存在しません。
実務での対応は決まっています。届出書とその翻訳を提出し、担当官と処理の方向を確認します。隠して進めるのではなく、日本にはこういう制度があり、当該関係会社はその制度の下で業務を行っている、という説明資料として出す形です。
この扱いは日本に固有のものではありません。ライセンス証書が別途発行されない法域では、当局の登録記録と会社登記の記録を組み合わせて疎明することになります。たとえばシンガポールについては、当局の登録記録とACRAのビジネスプロファイルを併せる方法がとられます。制度の形が違うだけで、やっていることは同じです。
届出書と一緒に何を添えるのか
届出書の翻訳だけでは、担当官が制度の位置づけを読み取れないことがあります。実務では、次のような形で読み手が判断できる状態にします。
- 届出の受理先の当局名と、届出がどういう性格の手続きなのかの説明
- 届出の年月日と、届出の内容(業務の種別)が分かる部分の翻訳
- 当該関係会社が、そのファンドの中でどの役割を担っているのかの整理
あわせて、無処罰の内部確認書と無業務停止の確認書も通常どおり提出します。これらは代表者が、過去3年間に金融業に関連する刑事処罰(罰金刑以上)を受けておらず、業務停止中でないことを確認する書面です。ライセンスの形式が何であれ、この確認書の提出は変わりません。
確認書でつまずく原因はほぼ一つで、署名者の特定です。署名する人の肩書と連絡先を署名前に確定しておかないと、署名を取り直すことになります。届出制度の下で業務を行っている会社では、届出書に記載された代表者と、現在署名権限を持つ人が一致しているかも確認してください。無処罰の確認書は3社分、無業務停止の確認書は6社分と対象の範囲が異なる点も、テンプレートを配る前に押さえておく必要があります。
他の法域でも同じ問題は起きるのか
ライセンス証書が発行されない、あるいは証書という形式をとらない法域は他にもあります。シンガポールのように、当局の登録記録は存在するがライセンス証書が別途交付されない場合は、その登録記録と会社登記の記録を組み合わせて疎明します。実務ではACRAのビジネスプロファイルを併せる方法がとられます。
共通しているのは、「証書がない」で止めずに「この会社はこの制度の下でこの当局の監督を受けている」という形に組み替えることです。何をもって監督の存在を示すのかは法域ごとに違いますから、関係当事者が複数の法域にまたがる案件では、当事者ごとに証明の型を決める作業が必要になります。
サービス提供会社が投資助言会社の親会社を兼ねているような場合は、それぞれの立場での監督関係を分けて説明します。一社が複数の役割を担う構造では、確認書や契約書の文言も役割ごとに整理しておく必要があります。
担当官はどこを気にするのか
照会の内容を予測しすぎるのは危険ですが、審査段階で出る質問は実務上おおむね四つの方向に集まります。ファンドの分類、報酬の負担者と根拠条項の位置、翻訳本における利益配分・報酬・換金不可の条項の位置、そして証拠の補完です。
届出制度の関係会社をめぐる質問は、このうち最後の類型に近いものになります。商号変更があればその証明、契約書の署名が漏れていればその補完、「別途書面で合意する」とだけ書かれている報酬については実際の合意書、という具合です。届出書の商号と契約書上の当事者名が一致しているかは、提出前に確認しておく価値があります。
回答書には、PPMとLPAの該当ページを示すのが基本です。関係会社の役割がPPMのどこに書かれているかを翻訳のページ対応表で押さえておくと、説明が短くて済みます。
早い段階で出したほうがよいのはなぜか
未公証版を先に提出して担当官の事前検討を受け、その間にGPが一括公証とアポスティーユを進めるという二段階の提出が実務の基本形です。ライセンスの形式に関する論点は、この事前検討の段階で出しておくのが合理的です。
公証とアポスティーユをすべて終えてから初めて論点を出すと、方針の確認結果によって書類の構成を変える必要が生じたときに、公証をやり直すことになりかねません。届出書とその翻訳は公証の対象書類ではありませんから、公証のスケジュールとは切り離して先に準備できます。
なお、日本の弁護士や司法書士が書類に署名しても、それは公証にもアポスティーユにもなりません。届出制度の説明資料についても、誰の署名を誰が認証するのかという形式の区別は同じように意識しておいてください。
次にすること
関係当事者の中に届出制度の下で業務を行っている会社がある場合、その事実は着手段階のスコーピングで洗い出します。20分の初回相談では、各当事者の監督の形式を確認し、何を疎明資料として組み立てるかをご説明します。ライセンス証明の欄を含む26項目の全体像は、書類チェックリストでご確認いただけます。