韓国の年金基金や保険会社からの出資が視野に入った段階で、販売会社から「韓国での登録が必要です」と告げられることがあります。外国の私募ファンドを韓国の投資家に勧誘するには、金融監督院(FSS)への登録が前提になるためです。ここでは、着手から登録完了までに何が起き、どの段階で誰が何を用意するのかを順に整理します。
韓国でのファンド登録は、何を登録する手続きなのか
登録の対象になるのは運用会社そのものではなく、韓国の投資家に販売されるビークルです。外国集合投資証券の国内販売登録は資本市場法第279条に基づくもので、韓国国内で設定される集合投資機構の登録(第182条)とは別の制度です。販売の方法については第280条が定めを置いています。
韓国 ファンド 登録という言葉が実務で指しているのは、この第279条の登録です。つまり、韓国の投資家に勧誘し、韓国の投資家を受け入れる予定のビークルだけが手続きの対象になります。ファンド・ファミリー全体を登録するわけではない、という点が最初に生じやすい誤解です。
設立地や戦略によって手続きの骨格が変わることはありません。ケイマンの免税リミテッド・パートナーシップ、デラウェアLP、ルクセンブルクのRAIFやSICAV、アイルランドのICAV、シンガポールのVCC、日本や香港のビークルのいずれであっても、登録の道筋は同じです。バイアウト、グロース、クレジット、インフラ、不動産、ファンド・オブ・ファンズという戦略の違いも同様です。変わるのは、設立や監督をどう証明するかという疎明資料の中身のほうです。
誰が申請するのか
申請は、GPから委任状(POA)を受けた韓国の代理人が行います。GPが海外から直接申請する形にはならないため、委任状の受任者を誰にするかを最初に決めることになります。委任状は26項目のチェックリストの先頭に置かれる書類でもあり、これが整わないと以降の提出が始まりません。
審査を担当するのは、金融監督院の資産運用監督局ファンド審査チームです。提出後は担当の調査役が個別に書類を読み、照会を出します。手続き全体は「窓口に出して待つ」というより、担当官とのやり取りを積み重ねる作業に近いものになります。
最初の1週間で何を決めるのか
スコーピングでは、ファンドの構造と関係当事者を一覧にし、どのビークルを登録するのかを書面で確定します。パラレルファンドやフィーダーを併設している場合、韓国の資金を受け入れないビークルは登録しないという整理になるため、この判断を先に済ませないと書類の範囲が決まりません。
同時に、構造に合わせた26項目の書類チェックリストを作ります。関係当事者は通常、GP、投資助言会社、サービス提供会社、アドミニストレーター、カストディアン、販売代理人の範囲で整理されます。どの当事者が存在しないのかを先に確定しておくと、後段で「該当なし」を説明する作業が軽くなります。
関係会社がライセンスではなく届出制度の下で業務を行っている場合も、この段階で洗い出します。隠して進める類の論点ではなく、届出書と翻訳を出して担当官と処理の方向を確認するほうが、結果として早く終わります。
書類はどの順で作るのか
26項目は七つのグループに分かれます。代理権限、ファンドの基本書類、関係当事者との契約、ファンド財務資料、無処罰の内部確認書、無業務停止の確認書、資産運用ライセンスの証明です。新設ファンドの場合、ファンド財務資料のグループは全体が該当なしになります。
実務では、他社の署名が必要な書類から先に動かします。無処罰・無業務停止の確認書は各関係当事者の代表者が署名するもので、署名者の肩書と連絡先を署名前に確認しておかないと、署名を取り直すことになります。GP側だけで完結する書類は後からでも間に合いますが、他社を経由する書類はそうはいきません。
翻訳は二方向で発生します。PPM、LPA、登記簿、報酬合意書の韓国語訳と、GPが署名するための申請書・事前チェックリストの英訳です。韓国語訳にはページ対応表を付けておくと、後の照会回答で該当ページを示すときに役立ちます。
なぜ未公証版を先に提出するのか
公証とアポスティーユが揃うまで待っていると、その数週間は手続きが完全に止まります。そこで実務では、まず未公証版を提出して担当官の事前検討を受け、その間にGP側で一括公証とアポスティーユを進め、公証原本を後から補完提出する形をとります。
この二段階提出は、書類の完成度を落とすためのものではなく、審査の開始時点を前に倒すためのものです。未公証版の段階で担当官から文言の指摘が出れば、公証をやり直さずに直せるという副次的な利点もあります。逆の順序で進めると、指摘のたびに公証とアポスティーユを取り直すことになります。
担当官は何を尋ねてくるのか
照会の内容は案件ごとに違いますが、実務上は次の四つの方向に集まります。
- ファンドの分類。追加型なのか閉鎖型なのか。
- 報酬を誰が負担するのか。その根拠条項が契約書のどこにあるのか。
- 翻訳本のどこに、利益配分・報酬・換金不可の条項が置かれているのか。
- 証拠の補完。商号変更の証明、「別途書面で合意する」とだけ書かれている報酬の実際の合意書、契約書の署名漏れなど。
回答書には、PPMとLPAの該当ページを示します。担当官が原文と翻訳を突き合わせて読むことを前提に、どのページを見ればよいかを指定する書き方にすると、往復の回数が減ります。四つ目の類型は書類の作り方で予防できる部分が大きく、スコーピングの段階で契約書の署名欄と商号の一致を点検しておく価値があります。
FSS登録までどれくらいかかるのか
着手から登録まで、一般的には3〜5か月です。準備と提出の段階は当事者側の動きで短縮できますが、審査区間の長さは担当調査役の業務量に左右されるため、固定した日付を置くことはできません。
韓国側のクロージング期日が先に決まっている場合は、逆算した計画表よりも「今週どの書類を動かすか」で管理するほうが現実的です。当所は、担当官から聞いた状況を毎週そのままお伝えする方法をとっています。
登録が完了しても手続きが終わるわけではない点にも触れておきます。販売報告、投資家への通知、登録事項の変更届出、年間の登録税が、登録後の継続的な義務として残ります。
次にすること
ご自身のストラクチャーでどのビークルが登録対象になるかは、パラレルファンドやフィーダーの有無で変わります。20分の初回相談では、登録対象の切り分けと、目標クロージング日に対してスケジュールが現実的かどうかを確認します。書類の全体像を先に把握したい場合は、26項目の書類チェックリストをご請求ください。