韓国の年金基金や保険会社だけを相手にする募集であれば、手続きが簡略になるのではないか。この質問は初回の相談で最も多くいただくものの一つです。結論から言えば、緩和要件は存在しますが、登録の枠組みそのものが外れるわけではありません。ここでは、何が変わり何が変わらないのかを整理します。
韓国 専門投資家だけを相手にする場合、何が適用されるのか
専門投資家のみを対象として販売する場合、資本市場法施行令第301条第3項の緩和要件が適用されます。外国集合投資証券の国内販売登録は第279条に基づくもので、販売の方法については第280条が定めを置いています。専門投資家限定の販売は、この枠組みの中で緩和が働く形です。
緩和の具体的な適用範囲は、ストラクチャーにより異なります。どの要件がどこまで緩和されるのかを一般論として断定するのは適切でないため、当所では着手段階のスコーピングで確認するという扱いにしています。
重要なのは、緩和要件があることと、登録が不要になることは別だという点です。韓国の投資家に勧誘し、韓国の投資家を受け入れるビークルであれば、相手が専門投資家であっても登録の対象になります。
何が変わらないのか
書類の骨格は変わりません。26項目のチェックリストは七つのグループに分かれており、代理権限、ファンドの基本書類、関係当事者との契約、ファンド財務資料、無処罰の内部確認書、無業務停止の確認書、資産運用ライセンスの証明という構成です。
公証とアポスティーユの扱いも同じです。韓国の官庁に提出する外国書類には、原則として公証とアポスティーユの両方が必要になります。公証は公証人が行い、アポスティーユは公証の後にその国の政府機関が別途発行します。日本では外務省が発行します。
申請の主体も変わりません。GPから委任状(POA)を受けた韓国の代理人が申請し、金融監督院の資産運用監督局ファンド審査チームが審査します。所要期間の考え方も同様で、着手から登録まで一般的には3〜5か月、審査区間の長さは担当調査役の業務量に左右されます。
緩和を前提に日程を詰めてよいのか
お勧めしません。緩和要件が適用されるとしても、それが審査区間の短縮を約束するものではないためです。準備区間で短縮できる部分は、緩和の有無とは別のところにあります。
短縮の余地があるのは次の三点で、これは専門投資家限定の案件でも同じです。
- 関係当事者からの署名回収を早く回すこと。確認書は各社の代表者が署名するため、署名者の肩書と連絡先を先に確定しておきます。
- GPの署名権者1名が12種を一括で公証すること。関係当事者ごとに個別に公証を取る場合より通常2〜3週間早く終わります。
- 未公証版を先に提出して担当官の事前検討を受け、その間に公証とアポスティーユを進めて公証原本を補完提出すること。
緩和要件の適用範囲が確定する前でも、これらは並行して動かせます。
申請書と事前チェックリストはどう扱うのか
登録申請書と事前チェックリストは、公証・アポスティーユの対象になる12種に含まれます。委任状、PPM、LPA、確認書4種、契約書3種と並んで、GPの署名権者が署名する書類です。
専門投資家限定の販売であっても、この構成は変わりません。GPが署名できるよう英訳を用意し、署名の後に公証とアポスティーユを取るという流れです。緩和要件の適用範囲が確定していない段階でも、これらの書類の準備自体は進められます。
事前チェックリストは、担当官が最初に構造を把握するための資料でもあります。専門投資家限定という前提を含め、募集の設計がここで正しく表現されているかを確認しておいてください。
誰が専門投資家に当たるのかは誰が判断するのか
実際に韓国で販売するのは韓国の販売会社です。したがって、投資家の分類に関する実務上の判断と、販売の局面での対応は販売会社側で行われることになります。
GP側で押さえておくべきなのは、専門投資家限定という前提が募集の設計と一致しているかという点です。PPMやLPAに記載された募集の方針、韓国のLPをどのビークルで受け入れるのかという設計、販売会社との契約上の取り決めが食い違っていると、審査の過程で説明が必要になります。
なお、韓国の投資家を受け入れないパラレルファンドは登録の対象になりません。専門投資家限定であるかどうかにかかわらず、登録対象のビークルを書面で確定する作業は着手段階で行います。
販売会社との関係でも、確認しておく点があります。プレースメント・販売代理契約は関係当事者との契約のグループに含まれ、販売代理人については無業務停止の確認書が必要です。専門投資家のみを相手にする募集であっても、これらの項目は通常どおり埋める必要があります。
審査で聞かれることは変わるのか
照会の方向は、実務上おおむね四つに集まります。ファンドの分類が追加型か閉鎖型か、報酬を誰が負担しその根拠条項が契約書のどこにあるのか、翻訳本のどこに利益配分・報酬・換金不可の条項が置かれているのか、そして証拠の補完です。
専門投資家限定の案件でも、この四つの方向は同じです。回答書にPPMとLPAの該当ページを示し、担当官が原文と翻訳を突き合わせて確認できる形にしておくという対応も変わりません。
換金不可の条項の位置が問われる類型は、閉鎖型のファンドでは特に確認されやすい部分です。翻訳のページ対応表を作っておくと、この種の照会に短く答えられます。
登録後はどうなるのか
販売報告、投資家への通知、登録事項の変更届出、年間の登録税という四つの義務は、登録完了後も継続します。専門投資家限定の販売であっても、自社の販売の形に照らして何がどう適用されるのかを個別に確認する必要があります。
緩和要件があるという一般論だけを根拠に、継続義務の一部を省略できると判断することは避けてください。登録完了の時点で、各義務の担当者と期日を一覧にしておくのが確実です。
次にすること
専門投資家限定の販売でどの要件がどこまで緩和されるかは、ファンドの構造と販売の形によって変わります。20分の初回相談では、募集の設計を伺ったうえで、緩和の適用範囲をどこで確認するか、書類の準備をどこから始めるかをご説明します。26項目の全体像は、書類チェックリストでご確認いただけます。