パラレルファンドやフィーダーを併設しているストラクチャーでは、韓国での登録範囲をどこまで広げるのかが最初の分岐点になります。全部を登録すると書類が数倍になり、逆に絞りすぎると後から追加することになります。ここでは、どのビークルを登録対象と考えるのかという判断の枠組みを整理します。
パラレルファンド 登録の要否はどう決まるのか
判断の基準は一つです。韓国の投資家に勧誘し、韓国の投資家を受け入れるビークルだけが登録の対象になります。韓国の資金を受け入れないパラレルファンドは、登録しなくてよいという整理になります。
これは外国集合投資証券の国内販売登録という制度の性格から出てくる帰結です。資本市場法第279条が対象としているのは、韓国国内での販売です。したがって、同じ戦略を同じGPが運用していても、韓国の投資家が入らない器については登録の議論が生じません。
逆に言えば、韓国のLPをどの器に入れるのかという設計上の判断が、そのまま登録範囲の判断になります。税務上の理由や規制上の理由で韓国の投資家を特定のビークルに集約している場合、登録対象はその一つに絞られることがあります。
なぜスコーピングで書面に残すのか
この判断は、着手段階で書面にしておく必要があります。理由は三つあります。
- 書類の範囲が決まらないと準備が始められないため。26項目のチェックリストは、登録対象のビークルを前提に組み立てます。
- 関係当事者の範囲も同時に決まるため。どのビークルを登録するかによって、確認書やライセンス証明を求める相手が変わります。
- 後から変更すると手戻りが大きいため。公証の対象書類は12種あり、対象ビークルが増えれば署名と公証をやり直すことになります。
口頭の合意だけで進めると、GP側の認識と韓国側の認識がずれたまま数週間が経過することがあります。「どの器に韓国のLPが入るのか」を一枚の紙に落とし、GP、ファンドカウンセル、韓国の代理人の間で共有してから書類を作り始めるのが確実です。
フィーダーやAIVはどう扱うのか
考え方は同じで、韓国の投資家が実際にどの器の持分を取得するのかを見ます。韓国のLPがフィーダーを経由して投資するのであれば、勧誘と受け入れの対象になっているのはそのフィーダーです。
ただし、ストラクチャーによっては単純な当てはめで済まないものもあります。共同投資ビークル、承継のために設けた器、案件ごとに組成するビークルなどが絡む場合は、韓国の資金がどの層に入るのかを構造図で確認したうえで判断します。個別の構造については、スコーピングで確認するほかありません。
ここで無理に一般論を当てはめるより、構造図を先に共有していただくほうが結論が早く出ます。図があれば、登録対象と登録不要の線をその場で引けることが多いためです。
登録対象を絞ると、作業はどれだけ変わるのか
登録対象のビークルが一つ決まると、そこから先の作業量が確定します。書類は26項目で、代理権限、ファンドの基本書類、関係当事者との契約、ファンド財務資料、無処罰の内部確認書、無業務停止の確認書、資産運用ライセンスの証明という七つのグループに分かれます。
この26項目は、登録対象のビークルとその関係当事者を前提に組み立てるものです。関係当事者は通常、GP、投資助言会社、サービス提供会社、アドミニストレーター、カストディアン、販売代理人の範囲で整理されます。対象ビークルが増えれば、契約書も確認書もライセンス証明も、その分だけ増えることになります。
公証の負担も同じように増えます。公証・アポスティーユの対象は12種で、GPの署名権者1名がまとめて処理する一括公証が、個別に公証を取る場合より通常2〜3週間早く終わります。ただしこれは、公証対象の書類が一組にまとまっている前提での話です。対象ビークルが複数になれば、一括公証の効果もその分だけ薄まります。
登録しないビークルについて説明は要るのか
登録対象を絞ったこと自体を隠す必要はありません。むしろ、審査の過程で関連ビークルの存在が書類に現れることがあるため、なぜそれが登録対象でないのかを説明できる状態にしておくほうが安全です。
PPMやLPAには、パラレルファンドやコインベストの仕組みが記載されているのが通常です。翻訳を読んだ担当官が、その記載について質問することは十分にあり得ます。そのときに「韓国の投資家は当該ビークルに受け入れない」という整理を、根拠となる記載とともに示せるようにしておきます。
照会への回答書では、PPMとLPAの該当ページを示すのが基本です。パラレルファンドに関する条項の位置も、翻訳のページ対応表に含めておくと対応が早くなります。
販売会社との関係はどう整理するのか
韓国での販売は韓国の販売会社を通じて行われます。登録対象のビークルが決まると、そのビークルの持分を誰が韓国で販売するのかという関係も同時に確定します。
チェックリストの上では、プレースメント・販売代理契約が関係当事者との契約のグループに含まれ、販売代理人については無業務停止の確認書が必要になります。したがって、販売会社が決まらないうちは埋まらない項目が残ります。販売会社の選定が登録準備の律速になることがあるのは、このためです。
複数のビークルに韓国の投資家を受け入れる設計にすると、販売の経路もビークルごとに整理する必要が生じます。登録範囲を絞ることには、販売側の契約関係を単純に保つという副次的な効果もあります。
韓国の投資家を後から別の器に入れたくなったら
登録は器ごとの手続きですから、当初登録していないビークルに韓国の投資家を受け入れることにした場合、そのビークルについて改めて手続きを検討することになります。登録済みのビークルがあるからといって、同じファミリーの別の器が自動的にカバーされるわけではありません。
そのため、韓国側のクロージング期日が決まっている案件では、想定される受け入れ先を早い段階で固めることが日程管理の要点になります。全体の所要期間は一般的に3〜5か月で、そのうち審査区間の長さは担当調査役の業務量に左右されます。対象ビークルを途中で足す判断は、この日程に直接効いてきます。
次にすること
パラレルファンドやフィーダーを含む構造で、どの器が登録対象になるかは、韓国のLPの受け入れ先の設計で決まります。20分の初回相談では、構造図をもとに登録対象と登録不要の切り分けをご説明し、目標クロージング日に対して日程が現実的かどうかを確認します。対象を絞った後の書類の全体像は、26項目の書類チェックリストでご確認いただけます。